前回は妊娠時の歯科の麻酔に対する影響についてお話しをしました。
興味がある方はこちらをご覧下さい。
今回は、授乳中に歯科で麻酔をしてそれがお子さんにどの様な影響を与えるかについて
海外において数名の研究者が、歯科用のリドカインと言う麻酔薬を使用して、母乳に含まれるリドカインの割合を調べた研究があります。
Giuliani達が行った研究1)では7名(29~39歳の女性)に歯科用リドカイン(この研究では日本の歯科用麻酔で添加される血管収縮薬であるアドレナリンは入っていません)を使用して2時間後には1L中に347.6 ± 221.8μgであったものが、6時間後には同じく1L中に58.3 ± 22.8μgとなってかなり量が減っています。
この論文では、授乳中に歯科の麻酔を行っても安全であると結論づけています(ただし、この論文では一般の日本で用いられるアドレナリンが入っていません)。
次にLebedevs達が行った研究2)では34歳の女性について計測されています。
経過時間などは書かれていませんが、20mgのリドカインを打ってその後の母乳に含まれる濃度を計測しています。
一般に日本で使用されるデンツプライ社の歯科用キシロカインカートリッジでは、1本1.8mlの中に36mgが入っていますので、5本半位使用した量となります)。
日本人では通常ここまでの本数は使用しないことが多いのでかなりの量の麻酔を使用したことになります(外人なので、体も大きいのでしょうか?)。
経過時間は書かれていませんが、母乳に含まれるリドカインの量は1L注に44~66μgの範囲だったと報告しています。
まとめると、これらどちらの研究においても、母乳に含まれる麻酔薬であるリドカインの量は乳児に対して影響を与えないレベルと言うふうに結論づけています(特殊なアレルギーを除いて)。
しかし、医療に絶対は無いので心配でしたらその日は母乳を与えないようにしましょう(アレルギーの可能性もかなり低いですが、0ではありませんので)3)。
その他には、近治療を受けることが決まっているようでしたら、母乳を冷蔵庫に入れて保存して、歯科治療で麻酔を行った時には、なるべく母乳を飲ませないようにすると言う対応を行ったほうが良いでしょう。
参考文献:
1)Giuliani M, Grossi GB, Pileri M, Lajolo C, Casparri G:Could local anwthesia while breast-feeding be harmful to infants?,J Pediatric Gastroenterol Nutr,2001,32(2),142-144.
2)Lebedevs TH, Wojnar-Horton RE, Yapp P, Roberts MJ,Dusci LJ,Hackett LP, llett K:Excertion of lignocaine and its metabolite monoethylglycinexylidide in breast milk following its use in a dental procedure.A case report,J Clin Peridontol,1993,20,606-608
3)金澤 真悠子,原田 純: 妊婦・授乳婦への歯科局所麻酔への投与について:Ora Dental Tops,(16)April.2010.1-4
YOU歯科 院長 歯学博士 石井 教生
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