最近キシリトールガムによるむし歯の予防が話題になっています。
今回のテーマはキシリトールガムは子供のむし歯予防になるのか?というものです。
テーマの問に関しては、確かに子供でもむし歯予防にはなります。
しかし、私は子供にキシリトールガムを推奨していません。理由については後に詳しくお話ししていきます。
テレビCMなどでもキシリトールガムによるむし歯の予防効果について派手に宣伝されているので、キシリトールガムを噛めばむし歯になりづらいと言う認識をお持ちの方もいるでしょう。
確かに、私が属している日本歯科医師会においても1日3回3ヶ月の使用によってむし歯を予防させる効果があると言うことで使用を推奨しています。
大人では、明らかにむし歯に抑制効果があります(しかし、私個人としてはキシリトールガムを利用したむし歯抑制は推奨していません)。
理由は、通常の歯ブラシを上手にすることが出来ればキシリトールガムを使用しなくてもむし歯にはなりにくいからです。
唾液の分泌が少ない方などは、併用をおすすめしていますが通常の歯磨きを大事に考えていますので、そちらをメインで行ってもらうのが良いというスタンスです。
更に詳しい理由を述べる前に、キシリトールガムがどのようにしてむし歯抑制を行うかについて簡単に説明します。
通常、むし歯はお口の中にあるむし歯菌(ミュータンス菌)が砂糖を分解して、その過程で酸ができてこれが歯を溶かすという機序でできます。
キシリトールガムに含まれるキシリトールは、通常の砂糖と組成が異なる為にむし歯菌が酸を作り出すことが出来ないのです。
また、ガムを噛むことによって唾液の分泌が増えます(通常のガムは砂糖が入っているので噛んでもむし歯になる可能性が高いので注意が必要です)。
この唾液の分泌促進がむし歯予防に非常に重要な役割をはたします。
唾液にはむし歯菌を含めた菌に対する抗菌効果と、むし歯を良い方向にもっていく(再石灰化と言います)効果の両方にプラスにはたらく作用があります。
これらによってむし歯抑制効果があるのですが、キシリトールには副作用があります。
それは、過剰摂取で下痢をするというものです。
子供であれば、特に大人よりも明らかに体重が少ない小児であれば少ない量でも下痢をする可能性が高くなってしまいます。
また、ガムは飲み込んでも安全と答えるガム製造メーカーもありますが小さい子供の場合は面白がって飲み込む危険性もあります。
大人でも飲み込む人がいます。
アーティストのきゃりーぱみゅぱみゅさんが美味しいガムは飲み込んでしまうことをツイッターで書き込み一時話題になりましたが・・・・
先ほどお話ししたように、ガムは飲み込んでも体では吸収かれないので安全だとする話の他にも恐ろしい話もあります。
たとえば、ガムの主成分である酢酸ビニルにはラットやマウスによる扁平上皮癌1)、ヒトにおいても発がん性の可能性があること2)報告されています。
恐ろしいですね・・・・
もともと、この材料は凄く簡単に言うと石油が材料で作られているものなので人体に対する影響が明らかでないものを噛んでむし歯予防というのはちょっとどうかな思うのですが・・・・・
通常の歯磨きを大事に考えそちらをメインで考えるのが良いでしょう。
参考文献:
1)既存化学物質安全性(ハザード)評価シート,1997,化学物質評価研究機構(CERI)
2)IARC Monograph Vol.63 (1995), IARC
YOU歯科 院長 歯学博士 石井 教生
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